「ピヨちゃん、」

「ん……はひ……待ってくださ…もぐもぐ」

「あ、サンドイッチ食べながら聞いてていいから」

「ん……すみません」

「たまには一緒に晩酌でもしようか」

「ん…ゴクッ……晩酌ですか?いいですよ、何が飲みたいですか?」

「じゃあ……ワイン。……スパークリングと赤一本ずつ」

「了解です」

「…………あ、それと、」

「んんっ……はい、」

「今夜抱くから」

「………………………」

「……以上」

「………………………っ!!!?」

「…………うん、スープ美味いな……」

サンドイッチを咥えた状態での彼女の驚愕、放心、後の悶絶葛藤は……笑えた。

笑ってしまいそうなのをなんとか堪えて平静を纏いながらチラリチラリと困惑の百面相を楽しんでしまう。

彼女もそこは意地っ張り。

咄嗟の爆弾に必死に平静を保って見せようとはしているけれど、残念ながら顔は赤らんでいるしサンドイッチから具材がポロポロ落ちているし。

そんな姿を見て見ぬふり。

何食わぬ感じに食事を終えると自分の食器を流しに置いてから、ポンと彼女の肩をひと叩き。

あからさまに跳ねあがった姿には見えぬ位置で口元に弧を描き、そのまま耳元で追い打ち。

「じゃあ、楽しみにしてるから」

「っ~~~~どっち!?」

思わず発してしまったらしい突っ込みには流石に小さく噴き出してしまった。

それでも敢えて言葉は響かせず、頭をクシャリと一撫ですると混乱している姿を放置して仕事の準備に向かうのだ。

この位の意地悪は御愛嬌。

あの夜の俺の告白を全て忘れた日陽に比べたら可愛いものだろ。

悲愴な顔なんて見たくはない。

でも………日陽の泣き顔は虐めてでもどうしてか見たくなる。




さて今夜は……いっぱい泣かそうか。




【END】