演奏場所は、公園の中でもまだ人通りの多い、
舗装された道の片隅で、ステージなどはない。

五十嵐さんは、私の荷物からレジャーシートを出して、
引いてくれている。

「それとこれ」

一リットルの空のペットボトルを出す。

「そう、それ不思議だったんだ」

五十嵐さんが見つめるなか、小さな袋の封を切って、
粉を入れていく。

「それは?」

「アクエリアスの粉、これに水を入れるとできるの」

「へえ!」

「持ち歩くのは重いので、ここで作っちゃうのよ、
 あそこで、水入れてきて」

「分かった」

五十嵐さんが、水を入れに行ったのを確認して、
ヴァイオリンを取り出し、調整する。