御曹司は恋の音色にとらわれる

「それなら、断然応援するよ、あー良かった」

「良かった?」

ちょっと気まずそうに拓が言う。

「周りは、世界に出るべきって言ってて、
 そうだなって思っても・・・・もちろん応援したいけど・・・
 やっぱり本心としては、一緒にいたい」

「海外は音大の夏休み、2回程サマースクールに行ってて、
 それで今はもう十分かな」

「じゃあずっと一緒だね」

「そうね」

新鮮な搾りたてのオレンジジュースを飲みながら言う。
風が窓際のカーテンをひらひらさせ、中庭が見える。
庭も専門の職人の手が入っているのだろう、
見事な洋風の庭だった。

庭に目を奪われていると、拓が私の横に来て、手を重ねる。
拓の目を見ると、真っすぐで、心から安心をくれる。

「一生君の演奏を聴いていたい」

「ずっと、最高の演奏を貴方に」