ある日の放課後。
帰ろうと下駄箱にいたら、木村先輩が駆け寄ってきた。

「……!?」

なんとなく何をしに駆け寄ってきたかは分かる。

この先輩……ほんと諦め悪いなぁ。

「ごめんなさい。今急いでるんで……」

こんな見え透いた嘘……通じないか?
なんて思っていたら、予想外の言葉が返ってきた。

「そっか……じゃあ、また今度ってことで」

「えっ」

あまりにも予想外な返事が先輩の口から飛び出したから、思わず声が漏れてしまった。

「えっ?」

「あ、いや……なんでもないです」

本当は、噂と違って意外と素直な人なの?

そう思ってしまうくらい、先輩は素直だった。

まぁ、話くらいならいいか……。

「……少しでしたらいいですよ?」

「マジで?」

「……はい」

そう言うと、先輩が空き教室を指さしたから、そこで話すことになった。
さすがに、こんな人通りの多い下駄箱で話してるわけにもいかないし。

「……で、話ってなんですか?」

今までのパターンで、だいたい分かるけど……。

「連絡先交換しない!?」

「えっ!?」

れ、連絡先交換!?
いつもみたいに、また告白かと思ったから、これまた予想外だった。