「ちょっとノエル様!なんでいきなりそうなるのですか!!」

「いいじゃん別にー」

「リースとゼノンもなんとか言って!」


朝からノエルの暮らす王宮の北の塔は賑やかだった。


ノエルが突然城下に行くと言ったためだ。

「なんとかって言っても…」

「ノエル様はしょっちゅう城下に行きますから」


ノエルはフェリシア王国の王女でありながら、周りからの扱いは王女へのものではなかった。

そのためやることの無いノエルはしょっちゅう城下に遊びに行っていた。

もちろん身分を隠して。「エレナは行ったことないの?城下」

「ないですね」

エレナはずっと侯爵家の一人娘として大事に育てられてきた。

将来は身分の高い貴族か王族に嫁ぐ身であるため侯爵家令嬢としての勉強をずっとしてきた。

そのため城下町に行ったことは1度もなかった。


「んじゃあ、エレナも一緒に行こう」

「ええ!?」

「私がおすすめの場所に案内してあげる」


(ノエル様と町にお出かけできるなんて嬉しいけれど…!)

ゼノンが許可するとは思えない。

「まぁ、最近頑張っていますからね。2人で城下町へ行ってきても構いませんよ」

「ほんと!?」

「ええ」

ということで2人で城下町に行くことになった。ガヤガヤ

「今日は新鮮な野菜が入っているよ」

「ドーナツはいかがー?」

「お母さん、あれ買ってー」


ここはフェリシア王宮の城下町

首都ということもあり、毎日多くの人で賑わっている。


「こんなに人が沢山…」

「舞踏会も人多いでしょ」

「でもそれとは規模が違うというか、活気が違うというか…」

生まれて初めて城下町に来たエレナは、人の多さと活気に驚いているようだ

しかしよく城下町を訪れるノエルにとっては今更なことだ


「ノエル様はそんなによくこられるのですか?」

「うん、月に何回か」

「そっ、そんなに!?お忍びなんですよね?バレませんか?」

そう、これはお忍びなのだ。
今日も王宮の城壁を登って城をでてきた。

「昔から行ってるし、男装してるから大丈夫」

「…」

(ノエル様の男装姿すごく似合ってる)

ノエルは城下に来る時は必ず男装をしている
第2王女だとバレて問題が起きないようにという配慮だ。
まぁ城下町に住む人々は第2王女だと知っているのだが。


「ここではエルと名乗っている。だからノエル様は禁止」

「わっ、わかりました。エル様」

「様はつけるんだ」

「もちろんです!!」


「とりあえず私おすすめのパン屋さんで腹ごしらえだ」


ノエルが初めて町に来た時、ノエルは迷子になってしまった。その時親切にしてくれたのはこの町に住む人達だった。

それから町の人々とノエルの交流は始まった。


交流する中でノエルは沢山の店を訪れ、お気に入りの店を開拓してきた。

その中の一つがこのパン屋だった。「ジルおじさん、おはよう!」

「おう、エルじゃねえか。パレードよかったぞ」

「ありがとう!」

ジルは昔からこの町でパン屋をいとなんでいる。

「ん?横の娘は?」

「新しい私の侍女」

「エレナです。よろしくお願いします」

「ははっ、そんなに固くなるなって」「はっはい」

そんなエレナの姿をノエルは笑ってみている

「ジルおじさんだけじゃなくてこの町の人はみんな優しいから」


「この嬢ちゃんは、町は初めてかい?」

「うん、エレナは人生初の町なんだ」

「そうか、楽しんでいってくれよ」

そう言ってニカッっと笑うジル

それを見たエレナは

(初対面の私にも優しいな。ノエル様がこの町が大好きなのもうなずけるかも)


「とりあえずなんかパンちょうだい」

「じゃあこれをやるよ。さっき焼きあがったばかりなんだ」

ジルが2人に渡したのはとっても美味しそうな焼きたてパンだった。

2人はさっそくパンにかぶりつく。

「「おいしい〜!!」」

「そうか、それはよかった!」
「何回食べてもジルおじさんのパンは最高だよ」

「こんなに美味しいパン初めてです」

2人はジルの焼いたパンを褒めちぎる


その後2人はジルの店をあとにし、次の目的地へと向かった。


「ジルさんのパンとても美味しかったです」

「でしょ?また行こ」

「はい!」



それから2人はノエルおすすめのお店何店舗かに顔を出した。

どの店でも歓迎され、ノエルがどれだけ国民に慕われているかをエレナは直に知ることができた。