な、なんか火花が…


二人の間に火花が散っているように見えるのは


気のせいだろうか。


この二人には仲良くしてもらいたいんだけどなぁ。


「あ、そういえば。

もう一人の金髪ヤンキーくんは?」


私がぶつかったヤンキーくんの方は


今日あれから一度も会っていない。


「あぁ。望(のぞむ)のこと?

アイツは隣のクラスだし

会うことはあんまないかもね」


へぇー。


あの人は望っていうのか。


なんか見た目に合わず可愛い名前。


「おーい、瑞樹!帰んぞー…って」


いつの間にか私たち以外誰もいなくなっていた


静かな教室に


ガラガラした大きくて重い声が響き渡った。


な、ここ教室だよ!?


広い場所じゃないんだし、


そんな大声出さなくても…。


あ。ひょっとしてケンカばっかしてて


大声が当たり前になっちゃったとか?


それはそれでかわいそう…。


「あ、噂をすればってやつか。

望、紹介するよ。花菜と梅」


急に紹介されて私達二人はあたふたしながらも


頭を軽く下げた。


小梅はゲッソリ顔を青くしてこっちを見た。


そうだよね。


今時短ランに金髪くるくるパーマなんていないよね。


そりゃビックリするわ。


「別に紹介なんかいらねぇ」


そう言って私達を見てチッと舌打ちをする望くん。


近くで見て気づいたけど、


意外と可愛い顔をしている。


けど…今みたいに睨む顔はヤンキーそのもので


かなり怖い。


何で瑞樹くんこんな人といるの!?


性格だって真逆そうなのに。



「はぁ。相変わらず女慣れしてないなぁお前は」


「う、うっせーよ!お前が慣れすぎてんだよ!」


「はいはい」


二人とも、凄い仲良しだなぁ。


私と小梅みたいに小学校からの仲とか?


「俺ら、一応これでもいとこなんだよ」


「「ええ~!?」」


まさかの瑞樹くんからの爆弾発言に私と小梅は唖然。


ぜんっぜん似てないんですけどっ!


「ふんっ。どうせ瑞樹狙いなんだろお前らも」


「「…はっ??」」


「コイツ選んだところで泣くだけだぜ」


泣く…??


どういう意味なんだろう。


「ちょ、ちょっと待ってよ!

私はまったく好きじゃないし!やめてよ!」


小梅がたまらず睨み返して言った。


小梅…すごいな。


こんなヤンキーを目の前にして


平然としていられるんだから。


そんな小梅を見て驚いた表情をしてみせる望くん。



二人を見てると…


あれ。なんだかお似合い?


なーんて思えちゃって。


でもそれをいうときっと


二人同時にキレるから、やめておこう。


「…別にお前が瑞樹を好きでも俺には関係ねーし。

おい瑞樹。とっとと帰るぞ!

こんなしょーもない女子どもと話して何が楽しいんだ」


瑞樹くんの腕を乱暴に掴み、


教室の扉へと引きずっていく。



「おい望。そんな言い方ないだろ。

…ごめんね!また明日!」


「あ、…うん。また」


瑞樹くんは望くんに引きづられながら帰っていった。



「何、アイツ。超腹立つんですけど!?

何様のつもり!?」


その後で小梅はグチグチ望くんの愚痴を言っていたけど


なぜだか、


さっきの望くんの言葉が頭から離れなかった。



『コイツ選んだところで泣くだけだぜ』