「こういう時、学校が近かったら楽なのにな」



別に家から特に遠いわけでもないんだけど。



最近走ってないせいか、


足がだんだんと重くなってくる。


運動不足かな?




ドンッ!!



「わっ」




いったぁぁ。



走ってたらいきなり何かに鼻をぶつけてしまった。



痛い鼻をさすりながら前を向こうとした途端



カチン、と体が硬直した。



やっばい。



やばい奴にぶつかってしまった私。



目の前には大きな背中。



短い制服。



短ランってやつ?



今時いるんだーってちょっとビックリな感じの。



綺麗な金髪にクルクルパーマ。




どうしよう、シメられる!?



痛みを覚悟で目をつむった瞬間、



「おい!ふざけんじゃねーぞ!」



上から聞こえる罵声。



「ご、ごめんなさい!ぶつかるつもりはなくて…」



ペコペコとただただ謝るものの、


なぜだか目の前の彼は背中を向けたまま。


なんで??



「キミにいってんじゃないよ」



「え?」



肩をポンと叩かれ後ろを振り向くと


そこには整った綺麗な顔が。



「わっ!!」



思わず後退りをする。



なになになになに。



ちょーイケメンなんですけど!?



あ、でも不良だ。


耳にたっくさんピアスがついてるし。


髪の毛は真っ黒だけど、


制服も少し気崩していて、チャラチャラした感じ。


でもそれがまた彼を輝かせている。



「アイツ、ケンカに夢中で

キミがぶつかったことなんて全く気づいてないから」



そう言って指差された方向を見ると



勢いよくドドドドッと飛んできた


また違うヤンキー。


な、なんなの!?



この人すごいケガしてるし。



「あんま見ない方がいいよ。

キミには刺激が強すぎるかも」



「そうかもです」



グロい映画を見るよりも倍以上怖い。


「あ、そうだ。はい、これ」


「あ、これ私のハンカチ!」


もしかして道で落としたのかな?



「ありがとうございますっ∥∥」


「いえいえ」


パッと視線を上げると目の前の彼と


バチッと目があって



更に鼓動がドドドドドッと早くなるのを感じる。



やばいやばい。


変な汗が体中からわき出てくるような…っ。




「おい!瑞樹(みずき)!早くしろよ」



えっ。


「ったく。ふざけんなよ。

それじゃあ俺がお前を待たせてたみたいじゃねーか」


「そうだろ。お前、

その変な女とイチャイチャしてやがるし」


「どこがだよ」



えっ。



さっき私がぶつかってしまった


金髪の変なヤンキーが


イケメンヤンキーくんに話してかけている。



えっ。


この二人って知り合い?!



意外だ。


全然タイプが違うのに。


イケメンと昔のヤンキーって感じ。



「つかもう8時過ぎてんじゃねーか。

転入早々遅刻なんて勘弁だぜ」


「あぁ。もうそんな時間か」


転入?


ここら辺の学校だよね、きっと。


だったら私の学校しかないから…



もしかしたらまた会えるかも。



「じゃ俺らもうそろ行くわ。また会えたら」


イケメンヤンキーくんが私にニコッと笑って


片手を少し挙げてくれた。


「は、はい!また…」




"また"会えるかな。



イケメンだし不良だし


きっと転入早々目立つよね。


ならすぐ見つけられるかも。





……きたかも夢にまでもみた甘恋!!!