安曇(あずみ)穂高(ほだか)は、高校の入学式で新入生として颯爽と現れ、その場にいた多くの人間の注目や関心をさらっていった。

 朱に交われば赤くなるというのは、きっといつも正しいわけではなくて、どこに交じっても彼は彼だった。むしろ周りが彼の存在の引き立て役になっているとでもいうか。

 くりっとした瞳、笑うとできるえくぼ、ほどよく日に焼け引き締まった体。背が高いのにどこか可愛いと思わせてしまう人懐っこい印象で、性格も穏やかならモテないわけがない。

 ルックスも文句なしで頭もよく、生粋の日本人でありながらアメリカ生まれのアメリカ育ちで英語もペラペラ。

 当然彼はすぐに学校一の人気者になった。それはもう半端なものではなく、動物園のパンダ並みに。

 彼の噂を聞きつけ、一目見ようとクラスや学年などの境界を越えて、連日休み時間には教室に人が集まった。対する彼はやはりパンダのようになにも気にすることなく、マイペースに過ごしている。 

 そんな彼が進学校とはいえ、こんな田舎にやって来たのは家庭の事情らしく、高校から市内に住む祖父母宅でお世話になっているのだと人伝いに聞いた。

 だからか、彼は学校を休むことも多々あった。それがさらに彼のレア感を高めていく。

 都会ならわからないけれど、こんな田舎にアイドルのような外見と才能を持つ彼が流星のごとく現れたので、しばらく学校だけではなく町中で彼は話題の人となった。

 そんな彼とたった一年。ううん一年もない。高校生活を一緒に過ごした。