──それは、小学五年生の冬休みに入る直前の日のこと。


『……好きだ』


誰もいない教室で、私は告白された。


幼い頃から、いつも一緒にいた彼に──。


『俺、彩のことがずっと好きだった。幼なじみとしてじゃなくて、俺と……、付き合ってください』


そう言って、彼は頭を下げた。


だけど、そのときの私は、まだ彼のことを〝ひとりの男の子〟として、意識したことはなかった。


だから、私はその告白を受け入れることができなかった。


『ごめんなさい……。気持ちはすごく嬉しいんだけど、私、翔とは幼なじみのままでいたい……』


はっきりとそう返事をすると、顔をあげた彼は一瞬顔を歪めたけど、すぐに優しく微笑んだ。


『そっか……。そうだよな。変なこと言って、ごめんな』


そう言い、彼は私の頭にポンと自分の手をのせた。


『翔……』


顔をあげると、翔は私の目をしっかりと見据えていた。


『……これからも、幼なじみとしてよろしくな?』


『う、うん』


その言葉に、私は素直にうなずいた。


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