『……好きなの』
それは、放課後のこと。
忘れ物を取りに教室へと入ろうとしたら、教室内から女の子のちいさな声が聞こえたんだ。
最初は、告白!?と思ったけど、聞き間違いか好きなものの話でもしてるんだろうと思い直して、教室の扉を開けようと、手を伸ばしたんだ。
だけど、その直後にその女の子は、はっきりと言ったんだ。
『私……、翔くんのことが、好きなの……っ!』
そのときに、声の主がゆりちゃんだということがわかって、私は扉を開けようと伸ばしたその手をすぐに引っ込めた。
告白したのが、ゆりちゃんだってことには、もちろん驚かされたけど、その相手が翔だってことには、もっと驚かされた。
しばらくの間、教室には沈黙が流れていた。
先に沈黙を破ったのは、告白された翔のほうだった。
そして、翔が放った一言が……。
『……俺も、ゆりのことが好きだ』
……翔もまた、ゆりちゃんのことが好きだったんだ。



