教室へと続く階段をひたすら上っていく。


私、中谷彩夏 (なかたに さやか) 、小学六年生。


今日の私の気分を色でたとえると……、ブルーです。


その理由は、すごくシンプルなこと──。


「おっ!彩、おはよう」


教室に入る一歩手前で、誰かに背中を軽く叩かれたかと思うと、同時に声をかけられた。


聞き覚えのあるその声に、胸の奥がギュッと苦しくなるのを感じた。


だけど私は、平静を装って、後ろを振り返った。


「おはよう、翔!」


精一杯の笑顔をその人物へと向ける。


私に話しかけてきたのは、幼なじみの加藤翔馬 (かとう しょうま) だった。


明るくて、元気いっぱいの彼は、いつも私の心を癒してくれる。


それは、今この瞬間もそうだった。