天満つる明けの明星を君に【完】

緩急のついた手もみは本当に気持ちが良くて、行儀は悪いが手を伸ばして徳利を引き寄せると、酒を口に運びながら吐息をついた。


「あー、気持ちいい…。雛ちゃん上手だね」


「時々旦那様にしてあげたりしてたから」


むかっ。


急に胸やけがして幸せな気持ちがどこかへ行ってしまった天満が黙り込むと、雛菊は急に天満の背中に馬乗りになって慌てさせた。


「ちょ、雛ちゃん!?」


「肩が凝ってるんでしょ?じっとしててね」


気持ち良さには抗えずそのままじっとしていた。

雛菊は天満の細い身体に口実をつけてべたべた触ることができて、どこもかしこも引き締まって筋張って固い男らしい身体つきに――半ば欲情を覚えていた。


「最近は私が触っても動じないようになったよね。慣れてきた?」


「そうだね、多少は。仰向けになっていい?腕をほぐしてほしいんだ」


今度はごろんと仰向けになった天満が右腕を差し出すと、丁寧に揉み解してあげていた最中、天満にじっと見られていることに気付いて頬を赤くした。


「な…なに?あんまり見ないでほしい」


「なんで?見てるだけだよ」


「天満様は目力がすごいから…。目が合うと時々どきっとしちゃうし…」


「ふうん…。ねえ雛ちゃん、前に到達地点は口と口がくっつくことだって言ってたよね。あれ、変えない?」


「え?ど…どういうこと?」


まだ少しいらいらしていた。

雛菊の右腕を握ってぐっと引き寄せた天満は、勢いで倒れ込んできたその細い身体をぎゅうっと抱きしめて耳元で囁いた。


「もっといけないことをしよう」


至近距離で天満の少し切れ長の目に青白い炎が燈るのを見た。


求められている――

求められたい――


想いが重なった。