天満は主に兄弟自慢をして、雛菊は自らの話はあまりせず聞き役に徹していた
――こんなにすらすらと女と話せたことはなく、それを不思議に思いながらも天満は語り続けた。
「で、朔兄がこの度当主になったから、僕ら弟妹たちは後方支援に回ろうっていうことになったんだ」
「素敵。天満様の発案でしょう?主さまは寂しかったでしょうけど、頼もしく感じたはず」
へへ、と照れていると、外が明るくなっていることにようやく気付いた天満ははっとして腰を浮かした。
「朝だ!話し込んじゃったね、どうしよう、旦那さんに怒られない?」
「…私と天満様が顔見知りなのは知っているし、何より主さま直々の申し出だったから逆らうことなんてできないから大丈夫」
「そう?でも町まで送るよ。雛ちゃんも用事があるだろうし、それが済んだらまた来て。この辺を案内してほしいんだ」
「うん。その前に朝餉を作って行くね」
食材は息吹がたっぷり持ち込んでくれていたため、保存食から魚や肉、野菜――なんでも揃っていた。
家の庭には氷室があって、そこに食材を入れているためすぐに腐る心配はなく、雛菊はそこから食材を選んで台所に立った。
「えっと…お鍋は…」
「戸棚の上にあるよ。取ろうか?」
「ううん、大丈夫」
雛菊が戸棚に手を伸ばした時――袖から‟それ”は見えた。
青黒く変色した痣…
治りかけではあるが、それは明らかに何者かに殴られたような跡だった。
「雛ちゃん…」
「え?」
雛菊が気付いた様子はなく、天満は小さく首を振って笑うと、居間に戻った。
…誰にやられたのか?
それを隠すために羽織を着て指先まで隠し、見えないように細心の注意を払いながら談笑していたのか?
「誰に…」
無理矢理問い質すわけにはいかない。
こんなにか細くて可憐な子に暴力を振るうなんて絶対に許されることではない。
「調べないと」
それも、最優先に。
――こんなにすらすらと女と話せたことはなく、それを不思議に思いながらも天満は語り続けた。
「で、朔兄がこの度当主になったから、僕ら弟妹たちは後方支援に回ろうっていうことになったんだ」
「素敵。天満様の発案でしょう?主さまは寂しかったでしょうけど、頼もしく感じたはず」
へへ、と照れていると、外が明るくなっていることにようやく気付いた天満ははっとして腰を浮かした。
「朝だ!話し込んじゃったね、どうしよう、旦那さんに怒られない?」
「…私と天満様が顔見知りなのは知っているし、何より主さま直々の申し出だったから逆らうことなんてできないから大丈夫」
「そう?でも町まで送るよ。雛ちゃんも用事があるだろうし、それが済んだらまた来て。この辺を案内してほしいんだ」
「うん。その前に朝餉を作って行くね」
食材は息吹がたっぷり持ち込んでくれていたため、保存食から魚や肉、野菜――なんでも揃っていた。
家の庭には氷室があって、そこに食材を入れているためすぐに腐る心配はなく、雛菊はそこから食材を選んで台所に立った。
「えっと…お鍋は…」
「戸棚の上にあるよ。取ろうか?」
「ううん、大丈夫」
雛菊が戸棚に手を伸ばした時――袖から‟それ”は見えた。
青黒く変色した痣…
治りかけではあるが、それは明らかに何者かに殴られたような跡だった。
「雛ちゃん…」
「え?」
雛菊が気付いた様子はなく、天満は小さく首を振って笑うと、居間に戻った。
…誰にやられたのか?
それを隠すために羽織を着て指先まで隠し、見えないように細心の注意を払いながら談笑していたのか?
「誰に…」
無理矢理問い質すわけにはいかない。
こんなにか細くて可憐な子に暴力を振るうなんて絶対に許されることではない。
「調べないと」
それも、最優先に。

