大体からして鬼族は主張の激しい者が多いのだが――雛菊は昔と同様本当に控えめで、母の息吹のように優しげな目元をしていた。
そろそろ夏が終わって涼しくなってきたものの…何故か雛菊は袖の長い橙色の羽織を着ていて、指先まで隠れていて、それを不思議に思いつつ問うた。
「ええと…雛ちゃんが僕のお世話係になったってことだよね?朔兄はなんにも教えてくれなかったんだけど」
「…はい。私では役不足でしょうか」
しゅんとなった雛菊に慌てた天満は、熱い茶を差し出しつつ焦りつつ、弁解を捲し立てた。
「いやその、僕人見知りだから。だから雛ちゃんの方がいいです。ちなみにお世話っていうのは具体的には何を?」
「お手伝い一般です」
「でも旅館の若旦那の妻ってことは…女将だよね?そっちの手伝いはいいの?」
――雛菊はどこか自虐的な笑みを浮かべて首を振った。
「私では何もお役に立てないので…。だから天満様のお手伝いをさせて下さい」
何か事情でもあるのか。
深入りはしない方がいいと判断した天満は、にこっと笑って茶を啜った。
雛菊はそんな天満を見つめつつ、笑った。
「随分男らしくなられてびっくりしました。女子が放っておかないでしょう?」
「ははは…昔と同じで今も苦手ですよ。あ、敬語やめてもいいかな。雛ちゃんも普通に話していいよ」
天満が気さくにそう言ったため、安心した雛菊は風呂敷をずいっと差し出して広げた。
中には美味しそうな饅頭がぎっしりで、天満は目を丸くして覗き込んだ。
「饅頭?もしかして雛ちゃんが作ったの?」
「うん。小さい頃天満様のお屋敷でご飯を頂いてから興味が出て作るようになったの」
頓着なくぱくりと食いついた天満は、餡が詰まった饅頭に目を輝かせて二個目に手を伸ばした。
「美味しい!さすが女将だね」
「…まだ沢山あるから。ご飯も作れるから私に作らせてもらえる?」
「うん、じゃあ一緒に作ろうか」
ふたりでにこにこ。
似た者同士のふたりは揃って饅頭に舌鼓を打ち、その後昔話に花を咲かせて夜更かしをした。
そろそろ夏が終わって涼しくなってきたものの…何故か雛菊は袖の長い橙色の羽織を着ていて、指先まで隠れていて、それを不思議に思いつつ問うた。
「ええと…雛ちゃんが僕のお世話係になったってことだよね?朔兄はなんにも教えてくれなかったんだけど」
「…はい。私では役不足でしょうか」
しゅんとなった雛菊に慌てた天満は、熱い茶を差し出しつつ焦りつつ、弁解を捲し立てた。
「いやその、僕人見知りだから。だから雛ちゃんの方がいいです。ちなみにお世話っていうのは具体的には何を?」
「お手伝い一般です」
「でも旅館の若旦那の妻ってことは…女将だよね?そっちの手伝いはいいの?」
――雛菊はどこか自虐的な笑みを浮かべて首を振った。
「私では何もお役に立てないので…。だから天満様のお手伝いをさせて下さい」
何か事情でもあるのか。
深入りはしない方がいいと判断した天満は、にこっと笑って茶を啜った。
雛菊はそんな天満を見つめつつ、笑った。
「随分男らしくなられてびっくりしました。女子が放っておかないでしょう?」
「ははは…昔と同じで今も苦手ですよ。あ、敬語やめてもいいかな。雛ちゃんも普通に話していいよ」
天満が気さくにそう言ったため、安心した雛菊は風呂敷をずいっと差し出して広げた。
中には美味しそうな饅頭がぎっしりで、天満は目を丸くして覗き込んだ。
「饅頭?もしかして雛ちゃんが作ったの?」
「うん。小さい頃天満様のお屋敷でご飯を頂いてから興味が出て作るようになったの」
頓着なくぱくりと食いついた天満は、餡が詰まった饅頭に目を輝かせて二個目に手を伸ばした。
「美味しい!さすが女将だね」
「…まだ沢山あるから。ご飯も作れるから私に作らせてもらえる?」
「うん、じゃあ一緒に作ろうか」
ふたりでにこにこ。
似た者同士のふたりは揃って饅頭に舌鼓を打ち、その後昔話に花を咲かせて夜更かしをした。

