天満の所在は朔が決めたが、その他の弟妹たちがどこへ行くかは父の十六夜が決めた。

それぞれが均等に散らばるように配置されてあり、なおかつ何か起こった時に不安にならないよう一族の者が近くに住んでいる場所で、朔は意外と心配性な十六夜と酒を飲み交わしながらずっと笑っていた。


「父様はこう見えて意外と心配性ですよね」


「…こう見えてとはどういう意味だ」


「他意はありませんよ。そういえば母様が以前父様は冷たそうに見えて優しい所があって、その差にときめくって言ってました」


「…」


普段無口な父の顔がやや赤くなっているのを見た朔は、弟妹たちがこんなに増えてもなお母を深く愛している父を尊敬していた。

今までは慣例で妻はふたり以上持つようにと言われていたが、その慣例は祖父の代で終わっている。

だからこそ…


「父様、俺も深く愛した女に出会えたら…妻はひとりでいいですか?」


「問題ない。子がひとりしかできなかったのは俺の父の代で終わりだ。お前もきっと俺みたいに子沢山に恵まれるだろう」


微笑み合っていると、天満がばたばた廊下を走っている音がした。

これから数日内に居なくなってしまう天満を心から案じている朔は、小さなため息をついた。


「父様…天満は嫁を貰うことができると思います?」


「…実は想像ができない」


「俺もです。でもきっと…」


黙り込んだ朔の肩を何度か叩いた十六夜は、豪快に酒を一気飲みして笑みを履いた。


「あれはいざとなればやる男だ。信じてやれ」


「はい」


ふたりして、心配性。