当主になった朔がまずはじめに為すべきことは、百鬼夜行の前に先代の十六夜と百鬼の契約を結んでいた妖たちとの再契約を交わすことだった。

主として相応しくないと思われているならば、去っていく。

主として相応しいと認めてくれるならば、また新たに契約を交わす。


――天満は庭に集結してひしめきあっている妖たちを眺めながらちびちびと酒を飲んでいた。

こんなに大集結することはほとんどないため、中にはほとんど見かけない妖も居たりで、肩の荷が下りてどこかすっきりした顔の父と肩を並べて見ていた。


「父様、これからどうなさるんですか?」


「息吹と別邸に移る。お前たちは弟妹たちとここに居るといい」


「ははあ、父様まさか母様とふたりきりになりたいんですね?」


「…」


「図星!ちょ…顔真っ赤にしないで下さい僕も恥ずかしくなるじゃないですか。あ、でも父様、移るのは明日以降にして下さいね。僕、朔兄が百鬼夜行から帰ってきたら言わなくちゃいけないことがあって」


十六夜が居間を振り返ると、大勢の子らが何故かにやにやしていて、ちょっとぞっとしながら眉を潜めた。


「…何をするつもりだ?」


「明日分かります。楽しみにしていて下さい」


妖たちとの契約は夜半すぎまでかかってしまい、そのほぼ全員が朔の百鬼となった。

そして朔の百鬼となった雪男は、朔に肩を抱かれてにっこりされて、冷や汗をかいていた。


「あの…なんですか?」


「主さまって呼んでみろ」


「ああそっか…そう呼ばなきゃいけなくなったんだな。…よし!主さま!今夜の百鬼夜行は俺がついて行ってやる!」


「よし。行くぞ!」


「応!」


皆の応じる声が地鳴りのように響いた。


そして朔の百鬼夜行が夜を行く。

天満はその軌跡にずっと手を振って送り出した。