天満つる明けの明星を君に【完】

暁が年頃になった時――その美しさに婿希望の文が毎日大量に届くようになり、朔はその文の山の前で頭を悩ませていた。


「縁談か。お前どう思う?」


「暁には好いた男と一緒になってほしいですけど」


「じゃあ天ちゃん私と夫婦になってくれるの?」


え、と声を上げた朔と天満が目を丸くしていると、暁はぽよんぽよんの胸をむにゅっと天満の腕に押し付けて抱き着いた。


「だって天ちゃんが一番好きだもん。あ、父様のこともだーい好きだよ」


「あああああ…暁…その手の冗談朔兄には通じないからやめて…」


「冗談じゃないもんっ。父様、駄目?」


「血が近すぎるから駄目。天満、お前も何か言ってやってくれ」


冗談なのか本気なのか全く分からない中、天満は我が娘のように育ててきた暁の頭を撫でてちょんと鼻を突いた。


「僕はずっと待ってる娘が居るから駄目なんだ。ごめんね」


「えー?じゃあ仕方ないね。でも天ちゃんを幸せにしてくれる方じゃないと駄目だよ。私が値踏みしてやるっ」


暁が弟と共に花畑の方へ向かうと、朔はやれやれと肩を竦めて笑った。


「お前も引く手あまたなんだけどな」


「ははは、残念でした。でもなんとなく…予感はあるんですよね」


「どんな?」


天満は快晴の空を見上げた。


「そろそろかなあって」


何が、と言いかけた朔は、天満の肩を叩いて同じように空を見上げた。


「そうだな、きっとお前のその予感は当たるだろう。楽しみだな」


「はい」


――そして暁が当主となり、恋をして天満の手を離れた時――


その娘は、天満と出会うことになる。


再び可愛らしい恋をして、様々な窮地を乗り越えて、愛を育む。

それはまた、別の物語。


【完】