朔と芙蓉は自室に戻り、障子を閉めるなり芙蓉に責め立てられた。


「何よ、女の所に行ってたって…」


「あれは雪男の想像であって真実じゃない。天満の所に行ってたんだ」


「半分以上、はね」


夫婦になる以前の話を責められてもと思ったものの、そこを突っ込んで喧嘩になるのを避けたかった朔は、久々に百鬼夜行をさぼれて羽を休めることもできたわけで、畳の上にごろんと寝転んだ。


「お前だって天満を見てぽっとなってたじゃないか」


「あれは!だって!あなたと輝夜さんのいい所を練り合わせてできたような顔をしてるもの!誰だってああなるわよ」


ふうんと気のない相槌を打つと、芙蓉は朔の隣に寝転んで腕枕をしてもらいながら今後のふたりを語った。


「暁が次期当主でなければ天満さんに養女に出したのにね」


「そうだな、暁に好いた男ができればあいつものすごく品定めしそうだし、俺より父親らしいから」


「あなたはれっきとした暁の父よ。でも暁にとっては父がふたり居るんだから幸せだわね」


「ん。じゃあもうひとり子を作るか」


「え!?な、何よ急に…きゃあっ!」


――芙蓉が朔に襲われている頃、屋敷の一角を与えてもらった天満は腕の中ですでに寝てしまった暁を優しく揺らしながら寝顔を見つめていた。


「抱っこの練習しておいて良かった。でも随分前に練習したのに忘れないものだね」


さすがに話し疲れて床に横になると、すぐ睡魔が襲ってきて朝までふたりでぐうぐう。

その夜久々に雛菊の夢を見て、とても幸せな気分で目が覚めた。


「暁おはよう。さ、ご飯を食べたらはいはいの練習をしようか」


「あぶぅ」


後見人として出来うる限りのこと全てを暁に教えてやろう。

それこそがきっと、僕の使命だから。