天満つる明けの明星を君に【完】

天満は昏々と眠り続けた。

朔たちは心配したが、晴明は朔が天満を抱えて違う部屋に移動させて床に寝かしつけてから戻って来た後、その説明をした。


「天満の意思とは相反して意識を司る部分がこれ以上活動を続ければ心身に何かしらの影響を受けるであろうと判断しているのだろう。深く眠ることでなるべく活動せぬようしているのだ。つまり今の天満は崖っぷちということだよ」


「…天満…」


「今もつらかろうが、時が経つにつれ現実を受け入れて行く中、様々な物や場所を見て雛菊との思い出を見出してしまう。そこからがまた地獄なのだ。なるべく独りにせぬようこちらが心掛けた方がいい」


――数日内に雛菊を弔わなければならない。

宿屋の従業員や鬼陸奥に住む者たちにも知らせを出さなければならず、それには夫の天満の許可が必要だった。


「母様はどうしますか?あまり長く離れていると父様が…」


「息子の方が大切だもん。でも離れてる間に十六夜さんが浮気したら許さないんだから」


浮気などするわけがないのだが、それを本人に言って焦らせるのが楽しみのひとつである息吹は、悩んでいる朔の手を握った。


「朔ちゃん、埋葬の件は天ちゃんの思うようにさせてあげて。こっちに埋葬するのならきっと天ちゃん私たちと一緒に幽玄町に帰らないだろうから…私は長引いても平気。傍に居てあげたい」


「分かりました」


雛菊の魂はもう彷徨ってはいない。

骸もすぐ傷むわけではないが、天満がどうしたいか訊く必要があった。


「雪男、お前は明日幽玄町に戻れ。屋敷の守り役をしてもらわないと困る」


「了解。俺も埋葬まで見守りたいから早めに決めてほしいけど、こればっかりはな」


正直言ってもう家族同然だった雛菊と赤子の骸を見るのは心が痛む。

天満になるべく早い決断をしてほしいと思いながらも、誰もそれを天満に告げることはできなかった。