緊張の糸が切れた瞬間だった。
天満を違う部屋で床に横たえさせた後事情を聞いた息吹は、ついに抑えきれなくなった涙を隠すため手拭いで顔を覆って手で押さえると、天満と雛菊の悲運を嘆いた。
「なんで天ちゃんたちがこんな目に…」
「輝夜が帰って来たのは警告のためだったんだな。精一杯のことをやってくれた。だけど…」
「外に洗濯物が散らばってた。雛菊は洗濯物を取り込もうとして外に出た所を…」
「庭にも結界があっただろうが、家の中よりはやや効力が弱い。…もう駿河は死んだかもしれないと気を緩めた所に…やって来たんだな」
朔と雪男の話を聞きながら、息吹は目の下にくまができて透き通るような美貌に翳りができてしまった天満の頬を撫でた。
その頬はとても冷たくて――何度も何度も頭を撫でてやった。
全てを失ってしまった天満をここから連れて帰らなければ、と顔を上げて朔の袖を握った。
「天ちゃんを連れて帰らないと…」
「ですが…天満はここから離れるでしょうか」
「え?」
「ここには雛菊と暮らした思い出が沢山あるでしょう。俺は天満の望む通りにしてやりたい。母様、皆で天満を尊重しないと」
「そう…だね…」
雛菊が転生するまで待っていると約束を交わしたふたり。
途方もない時がかかる可能性が高く、息吹は幽玄町に戻ったら朔を授かった時のように、毎日裏山の祠に行ってお参りをしようと強く心に決めた。
なるべく早くふたりがまた出会えるように祈ろう、と。
「天ちゃんが起きたら…みんなでご飯を食べよ。天ちゃんは食欲ないかもしれないけど、みんなで居ることが大切だと思うの。私が天ちゃんの手を離さないから」
皆で頷き合い、しばらくしてから起きた天満は――
傍に居た息吹の顔を見るなり落ち着きを取り戻して、伸ばされた手をぎゅっと握って深い吐息をついた。
天満を違う部屋で床に横たえさせた後事情を聞いた息吹は、ついに抑えきれなくなった涙を隠すため手拭いで顔を覆って手で押さえると、天満と雛菊の悲運を嘆いた。
「なんで天ちゃんたちがこんな目に…」
「輝夜が帰って来たのは警告のためだったんだな。精一杯のことをやってくれた。だけど…」
「外に洗濯物が散らばってた。雛菊は洗濯物を取り込もうとして外に出た所を…」
「庭にも結界があっただろうが、家の中よりはやや効力が弱い。…もう駿河は死んだかもしれないと気を緩めた所に…やって来たんだな」
朔と雪男の話を聞きながら、息吹は目の下にくまができて透き通るような美貌に翳りができてしまった天満の頬を撫でた。
その頬はとても冷たくて――何度も何度も頭を撫でてやった。
全てを失ってしまった天満をここから連れて帰らなければ、と顔を上げて朔の袖を握った。
「天ちゃんを連れて帰らないと…」
「ですが…天満はここから離れるでしょうか」
「え?」
「ここには雛菊と暮らした思い出が沢山あるでしょう。俺は天満の望む通りにしてやりたい。母様、皆で天満を尊重しないと」
「そう…だね…」
雛菊が転生するまで待っていると約束を交わしたふたり。
途方もない時がかかる可能性が高く、息吹は幽玄町に戻ったら朔を授かった時のように、毎日裏山の祠に行ってお参りをしようと強く心に決めた。
なるべく早くふたりがまた出会えるように祈ろう、と。
「天ちゃんが起きたら…みんなでご飯を食べよ。天ちゃんは食欲ないかもしれないけど、みんなで居ることが大切だと思うの。私が天ちゃんの手を離さないから」
皆で頷き合い、しばらくしてから起きた天満は――
傍に居た息吹の顔を見るなり落ち着きを取り戻して、伸ばされた手をぎゅっと握って深い吐息をついた。

