大切な者を失ってしまう感情を、理解することはできない。
天満の身に何かが起きたとすぐに分かった朔は、幽玄町の屋敷を守っている雪男と、幽玄町に住んでいる父母の元にぬらりひょんを行かせた。
事情は分からないながらも鬼陸奥へ向かうと伝言を託した朔の言葉に嫌な予感が胸をよぎった息吹は――すぐさま屋敷の裏山にある祠に向かい、そこで祈りを捧げ続けた。
「お願いします…雛ちゃんを助けて下さい…!お願い…!」
ここで祈りを捧げ続けたからこそ、子を授かれたと思っていた息吹は、あれから暇があればずっと祠の掃除を続け、祈りを捧げ続けていた。
天満はああ見えても強いから、きっと雛菊に何かが起きたに違いない。
何故かそう確信していた息吹は、涙交じりの目で手を合わせて祈り続けていた。
「雛ちゃんの願いを叶えてあげて下さい…!天ちゃんを…雛ちゃんを…赤ちゃんを救ってあげて…!」
息子と義理の娘のためなら、なんでもする――
ありったけの願いを込めて、祈り続けた。
息吹自身は気付いていなかったが――その時息吹の身体は淡く光り、念のためついて来ていた猫又は、後々その光景を朔に報告することになるのだが――
…天満は不器用な子だった。
兄弟の前では素直で隠し事などひとつもない子だったけれど、知らない者の前では蛇に睨まれた蛙のように、委縮して自ら前に出てくることのない繊細な子だった。
「私の命を賭けてでもいいから…お願いします…!」
この人の身にしては長く生き続けてきたから、この命がそれで尽きたとしてもきっと十六夜さんは許してくれる――
もし一緒に死んでくれると言うならば…それはそれで、本望。
「皆が幸せになれる方法を…どうか…どうかお願いします…!」
祈り続け、我が身を捧げ続けた。
天満の身に何かが起きたとすぐに分かった朔は、幽玄町の屋敷を守っている雪男と、幽玄町に住んでいる父母の元にぬらりひょんを行かせた。
事情は分からないながらも鬼陸奥へ向かうと伝言を託した朔の言葉に嫌な予感が胸をよぎった息吹は――すぐさま屋敷の裏山にある祠に向かい、そこで祈りを捧げ続けた。
「お願いします…雛ちゃんを助けて下さい…!お願い…!」
ここで祈りを捧げ続けたからこそ、子を授かれたと思っていた息吹は、あれから暇があればずっと祠の掃除を続け、祈りを捧げ続けていた。
天満はああ見えても強いから、きっと雛菊に何かが起きたに違いない。
何故かそう確信していた息吹は、涙交じりの目で手を合わせて祈り続けていた。
「雛ちゃんの願いを叶えてあげて下さい…!天ちゃんを…雛ちゃんを…赤ちゃんを救ってあげて…!」
息子と義理の娘のためなら、なんでもする――
ありったけの願いを込めて、祈り続けた。
息吹自身は気付いていなかったが――その時息吹の身体は淡く光り、念のためついて来ていた猫又は、後々その光景を朔に報告することになるのだが――
…天満は不器用な子だった。
兄弟の前では素直で隠し事などひとつもない子だったけれど、知らない者の前では蛇に睨まれた蛙のように、委縮して自ら前に出てくることのない繊細な子だった。
「私の命を賭けてでもいいから…お願いします…!」
この人の身にしては長く生き続けてきたから、この命がそれで尽きたとしてもきっと十六夜さんは許してくれる――
もし一緒に死んでくれると言うならば…それはそれで、本望。
「皆が幸せになれる方法を…どうか…どうかお願いします…!」
祈り続け、我が身を捧げ続けた。

