式神が産婆を伴ってやって来た時――雛菊は絶えず叫び声を上げて、天満はずっとその痛みに苦しむ叫び声を聞いて胸をかきむしる思いになっていた。


「これは一体…!」


「産気づいたみたいで…お願いします、赤ちゃんを取り上げて下さい!」


通常の妊婦ではないと一目で分かった産婆は、顔色を変えて雛菊の足元へ移動すると、足を開かせて様子を見た。


「子宮口が開いています!もうすぐ産まれて来ますよ…!」


「駄目、駄目ぇ…っ!」


それを否定するように雛菊が叫ぶと、天満はしっかりその手を握って言い聞かせた。


「でも雛ちゃん、もう産まれて来るんだよ!?どうしてそんなに産みたくないの!?」


「だって天満さん!この子は、呪われたから…!駿河さんに!産まれた時には死んでるんだよ!?だから、駄目!」


だが雛菊の願いとは逆に、赤子はさらに産道を下りて雛菊を苦しめていた。

事情が全く分からない天満は駿河が死の間際に放った一言が今まさに現実になろうとしていることを知って、唇をわなわなと震わせた。


「そんな…雛ちゃん…駿河の呪いが現実になったら……!いや、そんなことはない!赤ちゃんも無事に産まれて、雛ちゃんも無事なんだよ!そう信じないと!」


そう信じないと、この先どうやって生きていけばいいんだろう――?


――腹の傷口から出血し続けているため、手拭いでずっと押さえていた。

声が枯れてもなお声にならない悲鳴を上げ続ける雛菊の痛みを代わってやれたらどんなに良いだろうかと詮無いことを思いながらも、天満は傍から離れることができずに雛菊の爪が食い込んで出血しても、手を離さなかった。


「あなたは、お父様と会わなきゃ駄目…。だから、絶対無事に…っ」


上の空――それでも雛菊は、息を切らしながら産まれて来ようとする我が子に呼びかけ続けていた。