天満つる明けの明星を君に【完】

酔い潰れて眠ってしまった雛菊は、早朝に気怠さと熱っぽさを覚えて目覚めた。

泥のように身体が重たくてもしかしてこれが二日酔いなのか、昨日ははしゃぎすぎてしまったと反省して身体を起こすと――猛烈な吐き気に襲われて、また床に倒れ込んだ。


「て…天満さ、ん…っ」


起き上がることができずに身体を九の字に曲げてもがいていると、様子を見に来た天満は顔面蒼白の雛菊を見て血相を変えて駆け寄った。


「雛ちゃん!?どうしたの!?」


「気持ち…悪…っ」


今にも吐きそうな雛菊を抱き上げた天満が慌てて厠に駆け込むと、雛菊は苦しそうに何度か吐いて、膝を折った。


「雛ちゃん大丈夫?昨晩飲みすぎたのかな」


「そうかも…。それにちょっと熱っぽくて…」


――妖はなかなか病に罹ったりはしない。

熱っぽく感じるということはすでに大病の可能性があり、事態を重く見た天満はまた雛菊を寝かしつけて帰って来たばかりの朔に相談をしに行った。


「朔兄、雛ちゃんが調子が悪いみたいなんです。お祖父様に診てもらえないかな」


「調子が悪い?どう悪いんだ?」


「さっき吐きました。あと気怠くて熱っぽいって言ってますけど」


「……お前それは…」


「え?」


「いや、すぐ呼んでやるから傍に居てやれ」


天満が首を傾げながら雛菊の元へ戻ると、相変わらず顔色は真っ白で、落ち着かなくてそわそわしてしまった。


「雛ちゃん、お祖父様を呼んでもらったからすぐ診てもらえるからね」


「うん…ごめんなさい…」


「謝らなくていいよ、ちょっと疲れが出ちゃったのかな」


不安から雛菊が手を差し伸べた。

天満はその小さな手を握って励まし続けた。

大病でなければいい――

そんな勘違いをしながら、願い続けた。