生家に着くと、早速息吹に出迎えられて雛菊が満面の笑顔になった。
そして息吹はふたりがしっかり手を取り合って朧車から下りてくるのを見てにやにやしそうになる顔を必死に引き締めて両手を広げてふたりを抱きしめた。
「お帰りなさい!あっちはもう落ち着いた?」
「はい。母様こそお元気そうで良かった」
朔含め兄弟たちは皆息吹に頭が上がらない。
愛すべき偶像的存在で、父を含めこの母に何かあれば皆目の色を変えて問題を解決せんと奮闘してきて、今こうして穏やかに暮らせる日々を陰ながら守ることに半ば命を賭けている。
「私はいつだって元気だよ?あとね、主さ…十六夜さんがそわそわしてるの。息子にお嫁さんが来たんだから当然だよね!表情は変わってないように見えるけど、すっごくすっごく喜んでるよ」
足取り軽くふたりを先導して屋敷に招き入れて長い廊下を歩き、居間に着くと、朔と十六夜が揃って茶を飲みながら顔を上げた。
「着いたか。そろそろだと思ってた」
「朔兄!ただいま戻りました」
――十六夜は随分印象が変わったように見える天満をちらちら盗み見していた。
まさかこの引っ込み思案の三男に嫁が来るなど全く想像もしていなかったため、こちらを同じようにちらちら見ながら天満の背中でまごまごしている雛菊を見てふわりと微笑んでぽうっとさせた。
「よく来たな」
「は、はい。あの、私…精一杯天満さんを陰ながらお支えします。よろしくお願いしますっ」
畳に額がつきそうなほど頭を下げた雛菊にまたふと笑いかけて息吹と目が合ってしまって咳ばらいをした十六夜は、本当に随分凛々しくなった天満の頭をぐりぐり撫でた。
「目が回るほど忙しくなるぞ。今日はゆっくりして、明日から祝言の準備に入る」
「分かりました。じゃあ父様、朔兄、色々話そうよ。僕、いい酒を持って来ました!」
「雛ちゃんはこっちだよ、ご飯作るの手伝ってね」
「はいっ」
泣きそうになる程嬉しくて、鼻を啜りながら息吹の後をついて歩いた。
家族の温か味――天満との家族を作りたい。
なんとなく腹に手をあてて、願った。
そして息吹はふたりがしっかり手を取り合って朧車から下りてくるのを見てにやにやしそうになる顔を必死に引き締めて両手を広げてふたりを抱きしめた。
「お帰りなさい!あっちはもう落ち着いた?」
「はい。母様こそお元気そうで良かった」
朔含め兄弟たちは皆息吹に頭が上がらない。
愛すべき偶像的存在で、父を含めこの母に何かあれば皆目の色を変えて問題を解決せんと奮闘してきて、今こうして穏やかに暮らせる日々を陰ながら守ることに半ば命を賭けている。
「私はいつだって元気だよ?あとね、主さ…十六夜さんがそわそわしてるの。息子にお嫁さんが来たんだから当然だよね!表情は変わってないように見えるけど、すっごくすっごく喜んでるよ」
足取り軽くふたりを先導して屋敷に招き入れて長い廊下を歩き、居間に着くと、朔と十六夜が揃って茶を飲みながら顔を上げた。
「着いたか。そろそろだと思ってた」
「朔兄!ただいま戻りました」
――十六夜は随分印象が変わったように見える天満をちらちら盗み見していた。
まさかこの引っ込み思案の三男に嫁が来るなど全く想像もしていなかったため、こちらを同じようにちらちら見ながら天満の背中でまごまごしている雛菊を見てふわりと微笑んでぽうっとさせた。
「よく来たな」
「は、はい。あの、私…精一杯天満さんを陰ながらお支えします。よろしくお願いしますっ」
畳に額がつきそうなほど頭を下げた雛菊にまたふと笑いかけて息吹と目が合ってしまって咳ばらいをした十六夜は、本当に随分凛々しくなった天満の頭をぐりぐり撫でた。
「目が回るほど忙しくなるぞ。今日はゆっくりして、明日から祝言の準備に入る」
「分かりました。じゃあ父様、朔兄、色々話そうよ。僕、いい酒を持って来ました!」
「雛ちゃんはこっちだよ、ご飯作るの手伝ってね」
「はいっ」
泣きそうになる程嬉しくて、鼻を啜りながら息吹の後をついて歩いた。
家族の温か味――天満との家族を作りたい。
なんとなく腹に手をあてて、願った。

