天満たちはその外見の美しさからすぐに妖と分かるため、商店街の大通りがどれだけ混雑していても、自然と人垣が割れてすんなり通れた。
田舎から出て来た雛菊は見るものすべてがとにかく珍しく、またこうして人が住んでいる場所に下りてきたこと自体がはじめてだったため、天満の手をしきりにぶんぶん振って興奮していた。
「すごい…すごいですね!」
「はい、僕たちのお家が長年かけて築いてきた町です。だから朔兄と僕がこれからも守っていくんです」
「素敵」
花開くようにふわっと笑いかけられて顔から火が出そうになった天満は、なるべく雛菊の顔を見ないようにしながら目的の櫛屋に着くと、雪男の袖を引っ張った。
「ちょっと待ってて」
「じゃあ俺たち向かいの刀剣売ってる店に居るから」
別行動になってちゃんと雛菊と話せるかどうか不安になりつつも、きらきらした目で櫛を手に取ってみている姿を見ると、そんな不安も吹き飛んだ。
「どうしよう…どれもこれも素敵で…」
「一個じゃなくてもいいと思いますよ。これなんか可愛いな」
天満が手に取ったのは、薄い桃色の櫛に真っ赤な花びらがたくさんついた雛菊の柄が描かれてあり、それをふたりで見つめた。
「この花…」
「これ雛菊の花ですよね。確か僕の家の庭にも咲いてます。雛ちゃんの名だしどうかな」
「私に似合うかな」
「うん、似合いますよ。可愛くて雛ちゃんにぴったり……」
ついおかしなことを口走ってしまい、真っ赤な顔をしながら天満が後退ると、雛菊は天満が棚に戻した櫛を手に取って髪に差してみせた。
「ふふ、私これにします。天満様が選んでくれたから」
「あ…えへ…そ、そうですか…うん、いいと思います」
ふたりでてれてれしていると、様子を見に来た雪男が雛菊の手に握られている櫛を見て頷いた。
「ああ、いいの見つけたな」
「天満様が選んで下さったんです」
「へ?お前が?」
「ほ、ほらもう出ましょう!雪男お金払って!僕たち出てるから!」
また雛菊の手を握って町を案内した。
とても楽しくて、あっという間に日没を迎えてしまっていた。
田舎から出て来た雛菊は見るものすべてがとにかく珍しく、またこうして人が住んでいる場所に下りてきたこと自体がはじめてだったため、天満の手をしきりにぶんぶん振って興奮していた。
「すごい…すごいですね!」
「はい、僕たちのお家が長年かけて築いてきた町です。だから朔兄と僕がこれからも守っていくんです」
「素敵」
花開くようにふわっと笑いかけられて顔から火が出そうになった天満は、なるべく雛菊の顔を見ないようにしながら目的の櫛屋に着くと、雪男の袖を引っ張った。
「ちょっと待ってて」
「じゃあ俺たち向かいの刀剣売ってる店に居るから」
別行動になってちゃんと雛菊と話せるかどうか不安になりつつも、きらきらした目で櫛を手に取ってみている姿を見ると、そんな不安も吹き飛んだ。
「どうしよう…どれもこれも素敵で…」
「一個じゃなくてもいいと思いますよ。これなんか可愛いな」
天満が手に取ったのは、薄い桃色の櫛に真っ赤な花びらがたくさんついた雛菊の柄が描かれてあり、それをふたりで見つめた。
「この花…」
「これ雛菊の花ですよね。確か僕の家の庭にも咲いてます。雛ちゃんの名だしどうかな」
「私に似合うかな」
「うん、似合いますよ。可愛くて雛ちゃんにぴったり……」
ついおかしなことを口走ってしまい、真っ赤な顔をしながら天満が後退ると、雛菊は天満が棚に戻した櫛を手に取って髪に差してみせた。
「ふふ、私これにします。天満様が選んでくれたから」
「あ…えへ…そ、そうですか…うん、いいと思います」
ふたりでてれてれしていると、様子を見に来た雪男が雛菊の手に握られている櫛を見て頷いた。
「ああ、いいの見つけたな」
「天満様が選んで下さったんです」
「へ?お前が?」
「ほ、ほらもう出ましょう!雪男お金払って!僕たち出てるから!」
また雛菊の手を握って町を案内した。
とても楽しくて、あっという間に日没を迎えてしまっていた。

