天満つる明けの明星を君に【完】

口を開けたり閉じたりしているのを雛菊はずっと見ながらもぐもぐしていた。

あまりにも長い時間そうしていたため先に食べ終わってしまうと、膳を脇に置いてずいっと天満の前で正座した。


「ねえ、ご飯冷めちゃうよ?」


「あ、あー…うん、なんかお腹いっぱいかな…」


「でもほとんど食べてないよ?天満様、なんか言いたいことがあるんでしょ?言いにくいこと?」


「え、ええと…」


雛菊を抱いてから後、殊更可愛く思えるようになっていた。

どう伝えていいのか分からずじっと見つめていると、さすがに雛菊も長時間目を合わせることができず顔を赤くして俯いた。


「じゃあ私…洗い物してくるね」


「!ちょっと、待って」


今度は天満が膳を脇に置いて立ち上がろうとした雛菊の手を引っ張った。

日頃朔から男らしくあれと口を酸っぱくして言われていて、引っ込み思案な気性のためなかなか実行に移すことができなかったが――雛菊はいずれ妻となる女。

勇気を振り絞った天満はそのまま膝に乗せて、驚きに目を見張る雛菊の頬をつんと突つきつつしどろもどろになりつつも、本音を明かした。


「実は…雛ちゃんの月のものが明けるのを待ってました」


「え…あ…そ、そうなんだ…うん…」


「で、女の子を誘ったことのない僕はどうやって雛ちゃんを誘おうかとずっと悩んでました」


「うん…はい…」


「だから単刀直入に言うね。僕と一夜を共に…いかがですか?」


真面目な顔をして真面目に誘ってきた天満をはたと見つめた雛菊は――思わず爆笑して、天満の目を点にさせた。


「ふふっ、天満様、すっごい真面目な顔してる!」


「え、だって…どうやったらいいか分からなくて…」


純情一直線。

こんないい男が女の誘い方のひとつも知らず、顔を赤くして恥ずかしそうにしている様がなんともたまらなくて、ぎゅっと抱き着いた。


「天満様はそのままでいてね」


「え?うーん…いい雰囲気とか分かるようになりたいんだけど…」


「じゃあ私が教えてあげるから、勉強して下さい」


「はい」


笑い合って唇を重ね合って、抱きしめ合った。