年子と言えど兄ふたりに挟まれて小さくなった天満は、結局洗いざらい喋らされて終始にやにやされて肩身が狭かった。


「ちょっとふたりとも…百鬼夜行の真っ最中ですよ。僕が先頭に居るってどういうこと!?」


「お前が飛び出て行ったんじゃありませんか。私は戦うのは嫌いなのでお前にお任せします」


「じゃあなんでついて来たの!?」


朔ははははと声を上げて笑うばかりで、輝夜は刀すら抜かず朔の隣でにやにや。

結局天満がばっさばさと敵を斬り伏せたのだが、息ひとつ乱さず刀を鞘に収めた。


「輝兄、なんか胸騒ぎがしたんじゃないですか?だから会いに来たんじゃ…」


輝夜は伏せていた目をすっと上げて天満を見ると、ただ微笑んでまた目を伏せた。


「何故そう思うのですか?」


「そんな気がするだけですけど…輝兄は滅多に帰って来ないから」


「…天満、私は特別な力があり、それは自由に振るえるものではありません。私にはお前の未来が見えます。ただそれは…変えられるものではない」


「…はい」


「私が介入すれば捻じれたものとなり、お前の歩む道に影を落とすでしょう。天満…力が足りず至らない兄を許して下さい」


――悲しげな表情で何故か唐突に謝られて狼狽えた天満は、やはりこの兄がこれから起こるべく出来事を知っているのだと分かり、問い詰めたい思いと、この兄の歩んでいる茨の道に同情する思いが拮抗して胸を押さえた。


「輝兄は何も悪くないです。輝兄が会いに来てくれたことが僕にとっての啓示。何が起ころうと責めないし、僕の定めなのだと受け止めます」


「…お前は本当にできた弟ですねえ。今夜は早く帰って三人で枕投げでもしましょうか」


「わあ!小さい頃よくやりましたよね!やりたいやりたい!」


「決まりだな。今夜は敵襲も落ち着いているからもう戻ろう」


年子の三人は肩を並べて踵を返した。

恐ろしいことが起きようとも、きっと乗り越えられると信じていた。