早朝に朔と共に戻って来た天満は、一緒に風呂に入った後居間の食卓にて赤飯が炊かれている様に首を傾げた。


「赤飯…なんで?」


「ほ、ほら、天ちゃんがお嫁さん貰った記念だからっ」


何故かどもって焦りまくっている母が何か隠し事をしているのは明らかだったが――息吹の隣に座っていた雛菊をちらりと見ると…こちらも下手くそな感じに目を逸らして、天満は頭を抱えた。


「あの…なんか隠してない?」


「天満様!後でお話があります!」


「う、うん?」


家族で朝餉を食べつつ昨晩の成果を十六夜に報告した朔は、天満の勇猛っぷりを盛ることなく語って照れさせた。


「とにかく速かった。元々速かったけどもっと磨きがかかってた」


「速さだけなら朔兄に勝てますよ。この赤飯美味しいね」


赤飯の話になるとまた息吹と雛菊がきょときょと。

食べ終わった後一緒に自室へ行った天満は、襖を閉めるなり雛菊に謝られた。


「ごめんなさい、あの…一昨日天満様と一夜を共にしたことを息吹様に言っちゃったの。そしたら息吹様の頬が…」


「ああ…なるほど…」


――母は少し特殊ではあるが人であり、人の礼節や思想を今も守り貫いている。

よって恐らく祝言を挙げる日までは手を出してはならないという思いがあったのだろうが…


「まずかったよね…?」


「まあ…うん…後でちょっと怒られてきます。そうは言っても僕半分鬼だし…母様にはこんな言い訳通じないか…」


母に怒られることは兄弟全員苦手だ。

滅多に本気で怒ることのない母と向き合う覚悟をした天満が肩を落とすと、雛菊は天満の手を握って座らせた。


「あのね天満様、お話があるの」


そして月のものが来た話をした。

天満の顔はみるみる輝きを取り戻し、雛菊を抱き寄せた。


「雛ちゃん良かったね。僕も実はちょっと心配してたんだ。本当に良かった…」


腹が冷えないように温石を用意した後、一緒に床に入って眠った。

今まで幸せではなかった分、とてもとても大切にしなければ。

天満の決意は固く、ふたりはすぐ温かさに包まれて眠りに落ちた。