夕暮れになると庭には大勢の百鬼が集結した。

あまり派手なことを好まない天満と雛菊は、祝言を挙げる時まで夫婦になることを内緒にしてほしいと朔に願い出た。


「それは構わない。だけど弟や妹たちには知らせるぞ。あとお前…逃げられないように念書でも書いてもらったらどうだ?」


「朔兄ひどい!確かに僕はちょっと駄目な所もありますけど…」


「冗談だ。ところでいつあっちに戻る?お前にはしばらく大きな案件を回すのは避ける」


「え、なんでですか?」


「宿屋を再開させるんだろう?そっちに尽力してほしい。大がかりな討伐を行う際はそこに泊まるから、それまでに軌道に乗せるように」


「わあ…死ぬ気で頑張ります…」


「手が足りないならこっちから百鬼を貸し出してもいい」


朔がとても気を遣ってくれていることは嬉しいが、やはり手を煩わせたくないという思いが強い天満は、首を振って朔が持っていた盃に酒を注いだ。


「女中さんとか働いてくれる者たちの選定は僕がしようと思います。こう見えて審美眼は結構自信があるんです」


「ん、分かった」


「雛ちゃんがあと数日こちらに居たいと言うので、その間母様たちにも滞在して頂きたいんですが…」


「どんと任せて!」


息吹が自信満々に胸を反らせると、雛菊は目を輝かせて息吹の傍に座り直した。

可愛い娘ができる息吹と、幼い頃から慕っていた息吹が義母になる雛菊――

ふたり手を取り合ってきゃっきゃっ騒いでいる様は朔たちをほっこり和ませていた。


「今夜は僕も百鬼夜行について行こうかな」


「それは心強い。お前の腕が上がったかどうか俺が見てやる」


「わあ…頑張ります…」


小声になった天満の頭をぽかりと軽く殴った朔は、雛菊たちに手を振って百鬼夜行に出た。

その夜の成果は、多大なものとなった。