昨晩はじめて愛し合ってから今までの間に様々なことが起きすぎて、正直目まぐるしくて、池の前で中腰になって座り込んだ。


「雛ちゃん!?どうしたの!?具合が悪いの!?」


「あ…ううん、違うけど…ちょっと疲れちゃった…のかな?」


「疲れ……あ…もしかして昨晩のことで…」


「!あ、あのっ、違うよ、大丈夫!」


ふたりして顔を真っ赤にしながら焦りまくり、立ち上がった雛菊の手を握った天満は、餌を貰おうと口をぱくぱく開けている鯉たちに餌をやりながら、苦笑した。


「うちの家族は騒がしいから驚いたよね。ああ、あと雛ちゃん、僕言ってなかったことがあるかもしれないから、もう一度言うね」


「なあに?」


餌をやっている間隣でずっと袖を握っていた雛菊に向き直った天満は、意を決して雛菊の目をまっすぐ見つめた。


「僕は雛ちゃんが好きです。かなり好きです。大好きです。だから僕のお嫁さんになって下さい」


「……」


――雛菊の口はぽかんと開いたままで、目も大きく見開かれて、思わず天満も同じ表情になった。

了承は得ているはずだがこの反応…

固唾を呑んで雛菊を見ていると、雛菊は突然吹き出して、天満の袖を引っ張り回した。


「天満様ったら!ふふっ」


「え…え…っ?あの…雛ちゃん?」


「天満様、私のこと好きだって昨晩いっぱい言ってくれたよ。覚えてないの?」


「あー…えーと…夢中だったから…僕、言ってた?」


「言ってたよ。恥ずかしいからやめてって言ってもやめてくれなかったんだから。でも…私もたくさん言ったけど、まだ聞きたい?」


実の所あまり覚えていない。

初体験だったため無我夢中だったのが災いして、記憶が飛んでいた。


「聞きたいな。言ってくれる?」


「うん。私もね、天満様のことかなり好きです。だーい好きです。だからあなたのお嫁さんにして下さい」


誰かを好きになるというのは、こんなに幸せなものなのだろうか。

満たされて感動した天満は、雛菊を抱き上げてくるくる回って悲鳴を上げさせた。


「目が!回っちゃう!」


「今すっごく幸せだよ!雛ちゃん、ありがとう!絶対幸せにするからね!」


――そんなの、最初から疑ってなんかいない。

雛菊は天満に首に抱き着いて笑い声を上げた。


天満と家族を作る――

希望に胸を膨らませて天満と笑い合った。