天満の食べっぷりはもちろんだが――息吹以外の全員は牡丹餅が出されると、所作はきれいなのにあっという間に牡丹餅が無くなってしまって、雛菊が何かの術かと思うほどだった。


「というわけで、祝言は春頃にしようと思います!」


「…お前が決めるな。天満と雛菊に決めさせるのがいい」


「雛ちゃんも春がいいって言ったもん。天ちゃんは?」


「え…雛ちゃん白無垢着てくれるの?二度目は嫌だって…」


「あ、あの…何度着てもいいものだって息吹様が仰ったから…」


雛菊の花嫁衣裳を諦めかけていた天満の顔がぱあっと輝くと、なんだか猛烈に恥ずかしくなって俯いてしまった。

終始俯きがちな雛菊と、そういう傾向のある天満――似た者同士のふたりに鬼頭一家は頬を緩めてふたりを見守った。


「良かった!雛ちゃん色白だから絶対似合うと思ったんだ」


「天満が所帯かー。一番時間かかると思ってたのになー」


「雪ちゃんったら!天ちゃんはやればできる子なんです!本気になるのがいつもちょっと遅いだけだもんね」


褒められたようなそうでないような――

天満は雛菊に手を伸ばして握ると、立ち上がって輝かんばかりの笑顔を皆に向けた。


「ちょっと敷地内を散歩してきます」


手を繋いで庭に下りたふたりを見ていた。

とても微笑ましくて、普段手なんかほとんど握ってくれない十六夜をちらりと横目で見た息吹は、指をわきわきさせて、唐突にぎゅっと十六夜の手を握ってぎょっとさせた。


「な、なんだ!?」


「私だって!手を握りたい!」


「やめろ!は、離せ!」


「どうしてそう照れ屋さんなの!?手くらいいいでしょ!?」


妙な夫婦喧嘩が始まり、ため息をついた雪男はやれやれと肩を竦めて大量の文の選別に取り掛かった。