天満が十六夜と向かい合っている時、息吹は台所で牡丹餅を作りながらうきうきが止まらなくなっていた。
「うちにとうとうお嫁さんが来ちゃうんだねっ。祝言はいつにする?今寒いから春位に…」
「あ、あの、息吹さん…祝言は私…二度目なのでお断りしようかと」
「え?一度目も二度目もいいものだと思うよ?私、何度も着たいもん。白無垢着て一番好きな方に‟きれいだよ”って言われたいし、隣でにこにこしてたいけど」
…あの無表情な先代が‟きれいだよ”と言ったりするのだろうか、と内心思っていたのがどうやら顔に出ていたらしく、息吹はぷうっと頬を膨らませてあんこを塗りたくった。
「十六夜さんは恥ずかしがり屋さんだからみんなの前じゃ言ってくれないけど、でも時々言ってくれるし、天ちゃんは素直だからいっぱい褒めてくれるでしょ?」
「は、はい…。二度目でも…いいんでしょうか」
「うん、着ようよ。一緒に準備しようよ。天ちゃんも雛ちゃんの花嫁衣裳見たいはずだもん。ああ、あの天ちゃんにお嫁さんが!」
やはりそこが一番驚きらしく、家族全員が終始‟あの天満が”と言っているのがおかしくて、ようやく心からほっとして餅をきれいな形に丸めた。
「でも私宿屋を再開させて軌道に乗らせないと」
「時期が大切だよね。桜が咲く頃とか素敵じゃない!?どう?どうどう?」
――息吹が義母に。
こんな朗らかな方が母だったらどんなにいいだろうかと幼い頃から思っていた雛菊は、なるべく息吹の意向に沿えるよう計らうつもりで頷いた。
「素敵だと思います」
「じゃあこれ持っていって、天ちゃんに聞いてみよっ。あ、十六夜さんが反対したとしても気にしなくていいからね、私に任せて!」
とても心強くて、ふたりできゃっきゃっ声を上げながら牡丹餅を作りすぎて、皆に呆れられてしまった。
「うちにとうとうお嫁さんが来ちゃうんだねっ。祝言はいつにする?今寒いから春位に…」
「あ、あの、息吹さん…祝言は私…二度目なのでお断りしようかと」
「え?一度目も二度目もいいものだと思うよ?私、何度も着たいもん。白無垢着て一番好きな方に‟きれいだよ”って言われたいし、隣でにこにこしてたいけど」
…あの無表情な先代が‟きれいだよ”と言ったりするのだろうか、と内心思っていたのがどうやら顔に出ていたらしく、息吹はぷうっと頬を膨らませてあんこを塗りたくった。
「十六夜さんは恥ずかしがり屋さんだからみんなの前じゃ言ってくれないけど、でも時々言ってくれるし、天ちゃんは素直だからいっぱい褒めてくれるでしょ?」
「は、はい…。二度目でも…いいんでしょうか」
「うん、着ようよ。一緒に準備しようよ。天ちゃんも雛ちゃんの花嫁衣裳見たいはずだもん。ああ、あの天ちゃんにお嫁さんが!」
やはりそこが一番驚きらしく、家族全員が終始‟あの天満が”と言っているのがおかしくて、ようやく心からほっとして餅をきれいな形に丸めた。
「でも私宿屋を再開させて軌道に乗らせないと」
「時期が大切だよね。桜が咲く頃とか素敵じゃない!?どう?どうどう?」
――息吹が義母に。
こんな朗らかな方が母だったらどんなにいいだろうかと幼い頃から思っていた雛菊は、なるべく息吹の意向に沿えるよう計らうつもりで頷いた。
「素敵だと思います」
「じゃあこれ持っていって、天ちゃんに聞いてみよっ。あ、十六夜さんが反対したとしても気にしなくていいからね、私に任せて!」
とても心強くて、ふたりできゃっきゃっ声を上げながら牡丹餅を作りすぎて、皆に呆れられてしまった。

