天満つる明けの明星を君に【完】

雛菊と夫婦になれる――

それはとても嬉しかったけれど、それを遥かに上回って喜んでいた者が居る。


「…天満、息吹がはしゃいでいる。耐えられそうか?」


…一見妙な質問に思えるが、母の興奮っぷりは想像していたし、何より雛菊が息吹に心酔している節があるため、天満は肩を竦めて笑った。


「全然大丈夫ですよ。むしろ雛ちゃん、母様と似てる所が沢山あるから」


雛菊はすでに息吹に引っ張り回されていて、声をあげてあちこち部屋を案内したり台所でふたりで何かを作っていたりして楽しそうにしていた。

息吹至上主義の十六夜は、雛菊を心配している風だったが実際は雛菊が引いて息吹を悲しませやしないかと考えているのがばればれで、朔と天満は肩を寄せ合ってひそひそ話していた。


「父様は相変わらずだな。ところで天満、お前がここを発ってすぐ下の弟妹たちも各地に散らばったんだが、祝言を挙げる時に呼び集…」


「祝言なんですけど、雛ちゃんがあまり乗り気じゃなくて。二度目だからって」


「そうか。だけど母様を納得させない限りは難しいぞ」


「そこは雛ちゃんが頑張ると思います。でも…輝兄には知っててほしいなあ。帰って来てくれないかなあ…」


どこに居るかも分からない次兄――

朔は腕を組んで庭に目をやると、小さく笑った。


「あれのことだから知ってるんじゃないかな。それより天満、お前昨晩どうだったんだ?男になったんだろう?聞いてやってもいいぞ。具体的に」


朔も天満もまだ若く、まさかこんな話をする日が来ようとはとふたり吹き出しながらまたもそっと身体を寄せてひそひそ。


「それがですね、すごくて…」


「ふむ」


兄弟ふたり、終始ひそひそにやにやしていて皆に気味悪がられつつ、話は尽きず雪男から一喝された。


「主さま早く寝ろ!天満は…そこの置物と今後を話し合え!」


「…置物とは失礼な。殺すぞ」


父と雪男の仲の悪さも健在で、天満は笑いながら腰を上げて今後のことを話すため十六夜と向き合った。