天満つる明けの明星を君に【完】

普段から天満の食事の世話をしていたため、雛菊の手際は良かった。

息吹は如月はともかく我が子たちの中で最も所帯を持つのが遅い子だと勝手に思っていた天満がどうやら意中の娘とうまくいったらしいのを確信していた。

よって…

忙しなく目をきょときょと動かして食卓の前に座っていたため、十六夜はそれを横目で見つつも突っ込まなかった。


「で!?天ちゃん、お話ってなあに!?」


「…振りが下手すぎる」


あまりの大声にさすがに十六夜が突っ込みを入れると、並んで座っていた天満は箸を置いて正座をした。


母が反対するとは思えず、問題は――


「父様、母様、帰って来て早々忙しなくて申し訳ないんですが、雛ちゃ…雛菊と夫婦になりたいと思っています」


「やった!…あっ、ごめんね、どうぞ続きを…」


思わず声を上げてしまった息吹の脇を肘で小突いた十六夜は、酒を口に運びながら上目遣いでじっと雛菊を見つめて緊張させた。


「…元夫の生死が不明だと聞いているが」


「僕が必ず仕留めます」


「……お前たちの仲は離縁前なのか後なのか…どっちだ?」


――そう言われると、言葉に詰まった。

気持ちとしては離縁前からだが、告白をして今に至るのは、離縁後。

だが父に隠し事をしたくなかった天満は、背筋を伸ばして言い切った。


「僕の想いとしては、離縁前からです。だからといって僕のお嫁さんにするために離縁させたわけじゃありません。あの男は…最低だったから」


「あ、あのっ、私も…私もそうです。天満様に助けて頂いて、それから私も…」


…なんとも初々しく、別にふたりを虐めようとしていたわけではない十六夜は、座椅子の背もたれに身体を預けて腕を組んだ。


「反対はしない。だが必ず仕留めろ。お前ができないなら…一家総出で捜索にあたり、仕留める」


「先代様…」


すでに家族として受け入れられていた。

それがとても嬉しくてたまらなくて――

嗚咽が止まらなくなって、皆に笑われた。