天満つる明けの明星を君に【完】

雛菊は出戻りの自分を嫁に貰ってくれるとは思っていなかったし、天満は喜んでくれると思ったのに予想外の反応をされて、ふたりとも固まった。


「え…えっと…雛ちゃん、その反応はどうだろう…。予想外だった…?」


「だ、だって私出戻りで…うまくいくかもわからない商売をしようとしてて…」


狼狽えて焦りまくる雛菊をぎゅうっと胸に抱きしめた天満は、そのやわらかな肢体の感触を心地よく味わいながら、首を振った。


「うちはもう当主が居るし、僕は三男坊で、何をしたって結構色々許されてるし、行く末を一番心配されてたからむしろお嫁さんを貰うって言ったらものすごくみんなよろこんでくれると思うんだ。それとも雛ちゃん…僕に嫁ぐのが嫌だとか…」


「嫌じゃない!嫌じゃないです!私…天満様のお嫁さんになりたい…」


即答してぶんぶん首を振ったのを見た天満は、ほっとして雛菊の頬に指をつっと這わせた。


「朔兄はものすごく勘付くのが早いから明日にはもう知られてると思う。母様たちもまだ滞在してるし、明日ちゃんと話をしよう。大丈夫だよ、誰も反対しないから」


…そうは言われても、出戻り。

しかも離縁は成立していても元夫の生死は確定していないため、雛菊の表情が曇ったが、天満は雛菊の額にちゅっと口付けをして、にこっと笑った。


「それとも僕のお嫁さんになるのはやっぱり嫌…」


「嫌じゃないから!よろしくお願いします!」


「じゃあもうちょっと堪能させて下さい。圧倒的経験不足をこれから補わないとね」


部屋には結界を張っているため、内外の気は遮断されていた。

朔はすでに百鬼夜行に出ていただろうが――きっと状況はすでに先読みしているはず。


「色々訊かれそうだから、覚悟しておいてね」


「うん…天満様のお嫁さんになるためならなんでもするよ」


そしてまた指を絡めて、愛し合った。