抱いてほしいのに身体が拒否をする――

あの後一緒に熱い茶を飲んで、一緒に寝てもらった。

あれだけあの気にさせておいてできませんでした…というのはあまりにも申し訳なく、雛菊は天満の顔をまともに見ることができなくなった。


「雛ちゃん、僕またちょっと日高の方に行って若旦那の生死を確認しに行こうと思うんだけど…」


「うん、私は大丈夫。でも天満様、早く帰って来てね。寂しいから…」


「分かった。分かってるとは思うけど外には出ないでね」


天満と目を合わせることができず俯いていると、ぽんぽんと頭を軽く叩かれた後、天満は発った。


…昨日の出来事がなかったことのように振舞ってくれてはいるが…きっと…かなりがっかりさせただろう。

両思いだと知ってものすごく嬉しくて、すぐに抱いてほしくてお願いしたのに――


「私の馬鹿…馬鹿馬鹿!」


自身を責め立てて腕に爪を立てて歯を食いしばった。

駿河のことは今すぐにでも忘れたいのに、身体が覚えている。

駿河と天満の手つきは全く違うのに、触れられた瞬間駿河の顔が思い浮かんでどうしようもなく怖くなって、できなかった。


「ちゃんと謝らないと。天満様にがっかりされたくない…」


自分のためにまた日高に渡って駿河の生死を確かめに行ってくれたことは嬉しいが、昨日の今日で遠くへ行かれてしまうと、自分と距離を取りたいのだろうかと邪推してしまって気分がふさぎ込みそうになった。


「天満様の好きなものを沢山作ってあげよう」


天満は甘い食べ物が好きだ。

氷室からもち米を取り出した雛菊は、牡丹餅を作りながら帰って来たらまた抱いてもらえるかどうかお願いしてみようと決めた。


だがそれは…叶わぬ願いとなった。