ただ雛菊を抱きしめているだけなのに、それだけで息が上がりそうになった。

戦闘の最中でも息が上がったことなどほとんどないのに――

真心を込めて真名を呼び合い、想いが通じるというのはこういうことなのかという充足感を得た。

後は――


「天満様……して?」


「えっ。してっていうのは…その…」


「私を…抱いて下さい…」


途端、心臓がものすごい勢いで音を立てて暴れ回った。

日頃から朔に早く女を抱いて本物の男になれと言われ続けてきたが…今日がその日になるということなのだろうか。


「いい…の?でも僕…まだ経験がなくて…」


「そんなのいいの。天満様は耳年増なんでしょ?」


「ははっ、そうだった。僕は知識だけは豊富でした」


膝に乗っていた雛菊をそのまま抱き上げた天満は、居間から自室に移動しつつもやはり緊張して、目が潤んでいる雛菊をついに抱けるのかと思うと恐慌状態に陥りそうになって、雛菊を床の上に下ろした。


「天満様…脱がせて?」


「えっ。あ…うん…ええと…本当にいいの…かな?」


動揺しまくる天満が顔を赤くしながら慌てる様に、またなんとも愛しさがこみ上げた雛菊は、天満の手を握って帯に導いた。


「そんなんだと女の私が導くことになるけどいいの?私は…それでもいいけど…」


常に男らしくあれと教育されてきた天満は、女の雛菊に恥ずかしい思いをさせることは絶対にさせたくないと思って意を決して帯を外した。


「いや、僕がするよ」


「じゃあ私が天満様のを脱がせてあげる。……天満様にずっと触りたかったの。思いきり抱き着きたかったの」


意外と積極的な雛菊にまたあわあわしそうになった天満は、はだけた胸に頬を寄せてきた雛菊を一度抱きしめて、ゆっくり押し倒した。

ふたりとも――すでに息が上がっていた。