天満に向かって行った烏合の衆たちは、最近恐ろしくきれいな顔をした男が誰かを探し回っているという噂話を聞いて天満を追っていた。

そして行き着いた場所で見たのは、秘密の里で行われた惨劇――

五体をばらばらにされた者や、一撃で殺された者――全員が殺されていて、そこでやはり百鬼夜行の…鬼頭家の関係者だったのだと知ると、ここで討ち取るべしと一丸となり、向かって行ったのだが…


天満の動きを、目で追うことができなかった。

それほどに速く、その表情も見えず、仲間の悲鳴が轟くばかりで、次々と谷底に落ちてゆく。

動体視力のいい者は、天満がまるで舞っているかのように見えていた。

もしくは阿修羅か…

いや、鬼ならば、夜叉という表現の方が似合っているかもしれない。

実際天満が言い放ったように、誰ひとりとしてその身体にかすり傷ひとつ負わせることもできず、吸い込まれるように向かって行ってはあっさり落とされて、その数は十数人に激減していた。


「ひぃっ、や、夜叉だ…!」


「あんなの、殺せる気がしねえ!」


「あれで当主じゃないのか…!じゃあ当主はもっと強いということか…!?」


目のいい者はその時、天満が笑みを湛えているのを見て震え上がった。

この男は戦いを楽しんでいる。

こっちは死に物狂いで戦っているのに、笑みを見せる余裕すらある天満に戦意を失って敗走する者も現れたが、宣告通り、背中を向けた者にも天満は容赦なく追って行ってその命を奪った。

当主じゃないからと甘く見たのが運の尽き。


「夜叉に睨まれたら…もう終わりだ…」


全員がそう悟った。

そして、戦いはものの十数分で終わった。