天満つる明けの明星を君に【完】

数日後、晴明から文の返信があった。

早速文を開いた天満は、ひとつ息をして文を読んだ。


「ええと…‟薬を調べたところ、妖でも死に至る猛毒と判明。もしそれを使った場合、屍は腐ることなく紫に変色して残っているはず”。…そうか…それは確かめる必要がありそうだな…」


「天満様…」


「雛ちゃん、申し訳ないんだけど…父君の墓を暴かなきゃいけないんだ。確認したいことがあって…」


「お墓を…?それで…お父様の屍の色が変わってたら…」


「うん、若旦那が隠してた薬を使ったということなんだろうね。それが分かれば若旦那を制裁する大義名分ができるから僕としてはやりやすくなる」


――雛菊は天満の端正な横顔を見つめた。

敬愛する父に猛毒を盛ったともなれば、もう許すことはできない。

墓を暴かれることに抵抗はあったが、それで判明するならば――

それで、天満との仲が進展するならば…


「…分かりました。天満様、よろしくお願いします」


「…うん。じゃあこれから行こう」


差し出された大きな手を握って立ち上がり、鬼陸奥の墓地へ向かった。

もう随分風が冷たくて、心配性の天満にありったけ着せられて着ぶくれしながら鍬を使って父が眠る墓を掘る天満を見ていた。


「雛ちゃんは目の前に若旦那を引きずり出してほしい?それとももう僕が勝手にやっちゃっていい?」


「…目の前に引きずり出してほしい。私の人生を…お父様の人生を奪った男が死ぬのを見たい」


「うん、分かった。じゃあ必ず生かして連れて来るから」


木製の棺が見えた。

天満は鍬を置き、口を手拭いで覆いながら蓋を開いた。


「…屍も残ってるし、色も変わってる。これで決定打だ」


遂に動く決意をした。