「……」


慌てて彼のマンションまで来て、インターホンを鳴したのだが、応答がない。

すぐさま昨日の事が思い起こされてもう一度押す。が、やはり応答がない。

仁菜ちゃんに渡された彼の携帯は、まだ私が持っていて連絡がつかない。


「ど、どうしよう……」


これではまた昨日の二の舞だと肩を落としそうになったのだが、はっとする。

帰ってるか帰っていないのか、昨日の管理人さんに聞けば分かるかもしれないと。

キョロキョロと辺りを見渡して管理室を探す。探すと言ってもすぐそばの目に付くところにあったので、近づいて中を覗き込んで見た。

しかし、ガラスの向こうに見えるのは整理整頓が成された綺麗な机と監視カメラが映るモニター。それのみで、誰もいない様子だった。


「……はぁ」


思わずため息を吐き、振り出しに戻された事に落胆する。

どこに居るのか分からないけれど、約束を守ってくれるなら待ち合わせはここなのだからきっと来てくれる。と、ポジティブに考えるしかない。

多少不審者のように見えるがこのエントランスで待って居るしかない。


「うわ?!瀬戸さんまた待たせた?!」


と、心に決めたところすぐ、聞こえて来たのは彼の声。

驚いて顔を上げれば何故だかスーツ姿の彼がそこにいた。