息を吸い込んで声を掛ける。


「淵く……ふっ、む?」


しかし、今度は親指で唇に触れる。いや、また喋れないように口を封じようとしているようにも思える。


「??」

「……でも、今更だけど俺だって男なんだよねぇ」

「!」


その言葉は一連の行動の意味を簡単に理解させてしまう。

そうして、今度の私はギュッと目を力強く閉ざしていた。


「っ!」


次いで来るのは僅かな衝撃。

けれど、それに触れたと言うより、ぶつかるようなものに近い。


「……?」


何かが変だと、恐る恐る目を開いたのと彼が私から遠ざかったのは同時だった。

最後に離れたのは指先で、意味するところを理解するのは容易い。


「あはっ……瀬戸さんが移ったみたい。第三の選択肢ってやつ?」


何処か悪戯めいているようで照れくさそうにも笑う。

自らの指を間に挟んだ行動は、限りなくキスに近くて、それでいてそれに含まれはしない。

私は一体どんな反応を示せばいいと言うのだろうか。