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一度家に帰ったが、ギリギリながら大学の講義には間に合い、それが終わってからお昼の時間に私は校内のベンチでのんびりと座っていた。

昨日今日とずっと動いていたかのような気がして、今やっと一息つけた気もする。

ボーっと座りながら膝に置いた鞄を開く。鞄内のチャックが付いたポケットを開けば、私の定期券のパスケースの中に淵くんの家の鍵が入っている。

結論から言えば彼のマンションの部屋は自動施錠だった為、外に出れば自動に鍵が閉まるので私は鍵など借りなくても良かったのだ。

彼の家に入る用事など当然なく、私が持っている理由もまた無い。

それに気づいたのは外に出てからだったが、部屋に置きに戻る時間すら惜しいわけでもなかったのに、私は持ったまま大学に来てしまっている。


「う~~ん……」


自分自身の行動の理由が分からない筈もない。

今はまだ引き下がる事も進むことも出来ずに、口を固く結んで苦笑いしそうになるのを堪えながら唸るのみ。

こんな事なら置いて来ればよかったのに煮え切らない私。

どちらにせよ、部屋着用に借りた服の洗濯が終われば、それを返す為に会うのに、その前に一度機会を作ろうとしているだなんて。

最悪行動に映せなければ服を返す時に鍵も返せばいいだなんて。

私はこんなに狡い考えが出来る人間だっただろうか。