昨日の服で大学に行くわけにもいかないので、私も一度自分の家に帰ろうと、とりあえず簡単に身支度を整えて部屋を見渡した。

人の家だろうとやる事は変わりなく、戸締りと火の元の確認をする。


「大丈夫、だよね」


シンと静まり返る部屋で独り呟いて、最終確認としてテーブルに置いてある個人的に馴染のない鍵であるカードキーに手を伸ばす。


「……」


そんな動作、それに伴う音。一つ一つが妙に部屋内に反響して聞こえるような気がするのはやはり広い部屋だからだろうか。

何となく寂しい。だなんて、人の家で思ってしまう事も変な話だ。


「にゃー」


そこに籠った声の鳴き声が聴こえる。

シャルロットが別の部屋に居たのだとハッとして、昨日淵くんがシャルロットを連れて来た時に入っていった扉の前に足を進める。

勝手に部屋を開けるのもどうかとは思ったけれど、我慢できずに少しだけ隙間を空けた。

すると、待っていたかのようにシャルロットが入口の所に居て、反射的に私は手を伸ばした。

耳の辺りを撫でてやるとゴロゴロと喉を鳴らして目を瞑る。柔らかい毛の感触が心地いい。


「行ってくるね。お邪魔しました」


淵くんに言う代わりのように声を掛けて私はまた立ち上がった。