一日経ち、だんだん私が顕現した折り神のことがわかってきた。

千鶴は、自由奔放で楽観的な快楽主義者。単純で素直な性格だが、若干生意気で俺様気質なのは神様だからだろうか。

立ち振る舞いには神様らしい品があるが、やはりこの男には“デリカシー”というものが欠けているらしい。


『伊織があんたを呼んでこいってさ。』


「え?」


『朝飯。早くしねぇと、俺が全部たいらげるぞ。』


すくっ、と立ち上がった千鶴は、そう言い残してすたすたと部屋を出ていく。

むくり、と布団から這い出ると、味噌汁の匂いがふわりと香った。


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「おはようございます、華さま!」


「お、おはようございます…!」


用意されていた着物に着替え、屋敷の廊下を歩くと、すれ違う使用人たちがみな頭を下げて挨拶してくる。

夜のうちに緊急招集がかかり、私の存在を皆に細かく説明した、と咲夜さんが言っていたが、やはり“伊織の妻”として認識されたようだ。

若干緊張しながら茶の間に入ると、ちょうど一人分の朝ご飯を配膳し終えた伊織が、ぱっ、とこちらを見た。


「おはようございます、華さん。よく眠れましたか?」


「おはよう。ぐっすり寝れたよ、ありがとう。」