───ザァッ!
「!」
その時。突然、辺りを突風が吹き抜けた。
空を見上げると、そこに見えたのは大きな満月。どこか、いつもより空が近い。それに加え、星が輝いているはずの夜空がまるで嵐の前のように不気味な色をしている。
(え…?)
嫌な予感がしたその時、ぐにゃり、と足元が歪んだ感触がした。
とっさに視線を下げると、そこにはブラックホールのような“闇”。コンクリートに広がる黒い靄に、ずるり、と足がはまって動かせない。
「な、何…っ?!」
引き込まれる体。
揺らぐ視界。
辺りには、私しかいない。
まるで時空の歪みに巻き込まれるように、突然現れた闇の中に沈んでいく。
最後に見えたのは、妖しく光る満月だった。
“あぁ、死ぬのか、私。
最後まで最悪な人生だった。
こんな訳のわからない事故に巻き込まれて死ぬなんて───”
そう思った時、私の意識は、ふっ、と遠ざかったのだった。