「あー、やめやめ。私にはまだ、仕事がある。」


…と、寂しい言い訳をぽつりと呟き、自分を奮い立たせるように呼吸をした

その時だった。


ブブブブ…


ちょうどタイミングを見計らったかのようにバックの中でスマホが鳴る。

振動を手に取ると、画面に映し出されていたのは、勤務先の院長の名前。


「はい。藤堂です。」


『あぁ、藤堂さん。休日に悪いね。…実は急な話なんだが、明日から1ヶ月間、診療所を閉めることになってね…』


「え?」


『わたしの持病が悪化して、入院することになったんだよ。』


ガツン!


全身に鈍器で殴られたような衝撃が走った。

私の勤める診療所は小さく、院長がいなければ診察ができないのはわかる。

…だが、彼の一言一句をすんなり受け入れられるほど、簡単な話ではない。


『じゃあすまないが、休みをもらったと思って、ゆっくり過ごしてくれ。』


「えっ!あ、あの!」


ブツッ!


ツー…、ツー…


…あぁ、神さま。

あなたは、私から職まで奪うのですか。