「えっと…今からどこへ?」


そう尋ねた伊織に、私は歩き出しながら答えた。


「私の住んでいるお家。次の満月の夜まで、これから一週間は、伊織にもそこで暮らしてもらうことになるから。」


「え!」


「お家って言っても、神城の屋敷に比べたら、全然小さいんだけどね。伊織はびっくりするかも。」


少し、面食らったように動揺し始めた伊織に、きょとん、とする。急にそわそわし始めた彼は、そっ、と私の隣に並んで尋ねた。


「あの、お家の方は…」


「あぁ、私、一人暮らしだから、気にしないで。伊織の分の食料とかも、買い揃えて置いたから。」


「…。」


黙り込んだ伊織は、数秒何かを考え込んだ後、静かに呟く。


「服とかも、全部買っていただいたんですよね。」


「うん。入院中の着替えがあるから、伊織はそれで着回せると思うよ。」


「すみません、何から何まで…」


「いいのいいの。私も伊織のお家にお世話になった時、ご飯とかも食べさせてもらってたし。」


ただ、一つだけ言えば…私はこの歳になって初めて男性ものの服を買った。誕生日プレゼントというわけでもなく、大量に買ったトリップ初日。…男性の下着コーナーをうろついて、レジに行った気まずさと言ったらない。二度とあの店には行けないだろう。