「祐也くんって、クールでかっこいいよねー!」


「ほんとそれ! でもたまに優しいからキュン! みたいな!」


「そうそう! でも、やっぱり聡くんもまた違っていいというか……っ!」


「ね! あの笑顔はやばい!」



 今日も今日とて教室のあちこちでは、こんな会話が女子達によって繰り広げられる。ぼーっと頬杖をついて聞こえてくる可愛らしい乙女の会話を拾っていると、楽しくなってきた。


 やっぱり、恋する乙女は素晴らしい。


 でも……。と話題になっていた二人、和久津祐也くんと相澤聡くんに目を向けると、二人はひとつの机を囲んで立っていた。そして、その机にはまた別の男子が座っていて。


 その姿が二人の隙間から見えた瞬間、わたしの胸はドキンと高鳴って——



「で、名取がいなきゃもっと良かったんだけどねー」



 女子達の会話に、ガツンと頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。


 机に突っ伏して、ですよねー。なんて馬鹿らしい納得をする。


 恒例の続き方だから、だいたい予想はできてたけど、やっぱり辛い。



「あー、だよね、一人だけなんか地味だし……」


「正直釣り合ってないよね」



 どんどんヒートアップしていくので、聞き耳を立てるのはやめにした。シャットダウンだ。勝手に聞いておいて勝手にへこむわたしは、相当なバカだと自覚した。



 うちのクラス、二年三組の誇り高きイケメン二人組、和久津くんと相澤くん。彼らのかっこいい詳細はまた今度にしたとして、彼らには共通の友人がいる。


 それが一人だけ机に座り、眠たそうなまぶたをなんとか支えて会話を楽しんでいる彼、名取大和くん。


 わたし、朝霧みおの……好きな人だ。


 ああ、なんか自分で言ったら恥ずかしくなってきた! 絶対いらない情報だっただろうけど! でも言いたくなっちゃったんだから仕方ないんだ!


 赤面する顔を両手で覆う。うん、深呼吸だ。ここは落ち着くべし。すぅーはぁー。あ、なんかましになった。


 さっき女子達が言っていたように、名取くんは一般的に地味な部類に入る男子だと思う。それは認めようと思う。が、あくまでそれは一般的な話であって。


 一年生のときから彼に片思いしてきた身としては、むしろ名取くん以外は霞んで見えるというスキルを取得済みですよ、わたし。


 さすがに和久津くんと相澤くんは名取くんの友人なので、覚えなきゃリストには入ってるけどね。うっかりなすびになるときもあるっちゃあるけど……。


 とにかく、名取くんはかっこいいに決まってる。断言する。


 人の美的センスはそれぞれなんだし、そのことでとやかく言うつもりはない。だけど、自分の好きな人が悪く言われてるように聞こえたら、いい気はしないわけだ。わたしが勝手に盗み聞きしただけですが。


 ううー、でもわかってほしいー! 名取くんの良さを誰かと共有したいよー!


 あの眠たそうな目とか、微笑んだときのへにゃっとした口元とか、愛しくてたまらない。あとはさり気ない気遣いができたりとか。


 見れば見るほど名取くんを好きになる感覚が好きだ。