『少なくとも、私にはそう見えたけどね。あんたのお兄ちゃんは苦しそうな顔をしてるように見えたよ。』

「そっか……、」

そう言って、悲しそうに目を伏せた。

この子は本当に小四なのだろうか。とでも、という言葉では補えないほどに大人びている気がする。

なんだろうか。お兄ちゃんの幸せが大事って……、私が小四だった頃は日向と胡桃と泥だらけになるほどに遊んでいたというのに。

何かが、変わっていると思ったと同時に見えたもの。

『あれ…』

私の口から声が漏れでる。

「なに?」

ゆっくりと目を開けて茶色の透き通った瞳を覗かせた瑠璃ちゃんは、私が見ているものに気がついたらしく、「ああ、」と言葉を零しながら少し悲しそうに笑った。

「あれはね、お兄ちゃんとあたしが大好きな__大好きだったお母さんの仏壇だよ。」

ゆっくりと言葉を落とす瑠璃ちゃん。仏壇に向けるその目は私に向けられるものとは違って、優しさに溢れていた。