あのときの彼がもっていた柔らかくて優しい空気と、今目の前にいる人物が放つ精悍な雰囲気は、ほとんど真逆で重ならない。
でも、はっきりした二重の目や、きれいに伸びた鼻梁、唇の形。顔の中にあるパーツのひとつひとつは、似ている……気がする。
まさか……。
「社長は、アメリカに留学されていたんですよね。大学はたしか」
「ハーバード。なんだよ急に」
話の腰を折られて不満げな顔をする彼を、じっと見た。
やっぱり、ちがう。
だってニューヨークで会った彼はケンブリッジ大学に通う留学生だったのだ。だいたい、ケンブリッジ大学はアメリカではなくてイギリスの学校ではないか。

